研究課題
大気中CO_2濃度の上昇に伴う海洋環境の変動は、サンゴ礁域に生息する生物に様々な影響を及ぼすことが懸念されている。本研究ではCO_2濃度上昇に伴う海洋環境の変動(温暖化/酸性化)がサンゴ礁域に生息する魚類に及ぼす影響を明らがにすることを目的とし、クマノミおよびカクレクマノミの初期発生に及ぼす生理的影響を室内実験および野外調査により検討した。胚実験:クマノミおよびカクレクマノミの受精卵をCO_2分圧380(現在)_および1,000□atm(100年後に予測されるpCO_2)水温を28から32℃に調整した海水中で孵化直前まで飼育し、生残を確認した。受精後46、96、144h後に胚発生および耳石の形態を観察した。仔魚実験:クマノミの孵化直後の仔魚をCO_2分圧380および1,000□atm、水温を28、30および31℃に調整した海水中で飼育し、日齢3、6、9、11日に体長・体重の測定、および耳石の観察を行なった。稚魚実験:クマノミおよびカクレクマノミの孵化後3ヶ月の稚魚を水温27、29、31、33、35および37℃で飼育し酸素消費量を測定した。野外調査:野外でのクマノミおよびカクレクマノミ胚の経験水温を記録するため、各1対の産卵ペアー付近に水温ロガーを7月~10月まで設置した。受精後46hにおけるクマノミ胚は、CO_2分圧に関わらず、奇形固体が29℃では0%であったのに対し、31℃では50%、32℃では67%観察された。一方、カクレクマノミ胚について、水温による影響は見られなかった。クマノミ仔魚は、水温上昇と共に成長が早くなる傾向が見られ、CO_2の影響は観察されなかった。クマノミおよびカクレクマノミ稚魚の酸素消費量は、それぞれ31℃と29℃で最大となり、限界水温は36℃であった。以上の結果より、クマノミ類は種間での温度耐性に差があり、クマノミ胚が正常に発生する限界水温は30℃であると考えられる。沖縄本島沿岸では、既に水温が30℃を超える日が観察されることから、今後さらに温暖化が進行した場合、クマノミ個体群が大きく影響を受ける可能性が予測される。
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Plankton & Benthos Research
巻: 5 ページ: 119-122
Biology Letters
ページ: doi:10.1098/rsbl.2010.0777
http://www-mri.fish.nagasaki-u.ac.jp/kenkyu/ishimatsu/ishimatsu.html