研究課題
【本年度の研究実施計画】20,000ppmへの高CO_2曝露実験(2週間程度)を行い、以下の検討を行う。CO2に対する酸塩基平衡調節機構の応答が淡水と海水でどのように異なるかを解明するため、炭水および海水に馴致したジャワメダカを用いる。大気中CO_2分圧(pCO_2)は現在の390μatmから2100年には約1000μatmに上昇すると予測されている(IPCC 2007)。pCO_2上昇に伴う海洋酸性化はサンゴ、貝類等における生物石灰化を抑制することが報告されているが、魚類に対する海洋酸性化の慢性影響を検討した例は乏しく、再生産について検討した例は現時点では皆無である。本実験ではジャワメダカを供試魚とし、2100年に予測されるpCO_2が海水馴致したジャワメダカに与える慢性影響を明らかにすることを目的とした(実験1,2)。また、魚類の酸排出には鰓の塩類細胞が関与している可能性が指摘されている。本実験では酸排出に対する塩類細胞の関与を検証するため、海水および淡水に馴致したジャワメダカにCO_2曝露を行い塩類細胞の形態学的観察を行った(実験3)。[実験1]すべての測定項目についてCO_2曝露による影響はみられなかった.曝露開始後21週まで産卵を継続したペアは、対照区で4ペア、実験区で2ペアで、産卵数は両区ともにペア間で大きく変動した。[実験2]すべての測定項目についてCO_2曝露による明白な影響は見られなかった。曝露開始後3週の時点で産卵を継続しているペアは両区において9ペアで、産卵数は両区ともにペア間で大きく変動した。[実験3]塩類細胞の形態にCO_2曝露による顕著な変化はみられなかったが、海水馴致個体ではCO_2曝露によりCl^--channeおよびNa^+/K^+/2Cl^--cotransporter 1に対する免疫染色の染色強度が増加する傾向がみられた。
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