本研究は、南極域成層圏での温室効果気体の分布と変動を明らかにするために、2012年に南極昭和基地において小型成層圏大気サンプラーを用いた成層圏大気の直接採取実験を行うこと、そして採取された大気試料を国内で精密に分析することにより、南極域成層圏における温室効果気体の分布と変動を明らかにすることを目的とする。今年度は、我々が独自に開発した小型成層圏大気サンプラーの信頼性・安定性をさらに向上させ、成層圏大気試料の採取量を増加させるために、種々の改良を施した同サンプラーを新たに設計・製作した。また、成層圏の低圧低温環境(気温-60度、気圧25hPa)での使用に耐えるサンプラー構成部品(バルブ等)の選定・改良・試験を行った結果、これまで必要であったヒーターによる保温が不要になり、消費電力を一桁減少させることに成功した。本サンプラーの試料容器中に保存した大気試料のCO2濃度が変化してしまう問題を解決するため、試料容器の内面処理方法の改良と試験を開始した。現在、新たな内面処理方法の効果を検証するため、CO2濃度既知の標準ガスを用いた大気試料保存試験を実施中である。また、成層圏を飛翔中の本サンプラーの動作を制御するために必要な搭載コントローラの開発にも着手し、基本ハードウェア・ソフトウェアの選定を完了した。
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