研究課題/領域番号 |
21310016
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研究機関 | 独立行政法人農業環境技術研究所 |
研究代表者 |
白戸 康人 独立行政法人農業環境技術研究所, 農業環境インベントリーセンター, 上席研究員 (30354062)
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研究分担者 |
近藤 美由紀 国立環境研究所, 環境計測研究センター・同位体・無機計測研究室, 特任研究員 (30467211)
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キーワード | 土壌有機物 / モデリング / 放射性同位体炭素 / 平均滞留時間 / 分画 |
研究概要 |
日本の農耕地から、過去の農地管理の履歴や作物の収量、作物残渣や堆肥の投入量、土壌の粘土含量や炭素含量など、土壌炭素動態モデルRothCの入力データが揃っている長期連用圃場を非黒ボク土畑と黒ボク土畑から各2地点選定し、それぞれ化学肥料区と堆肥施用区など、土壌管理法が異なる2つ以上の処理区から土壌試料を採取した。 採取した土壌は、比重やサイズによる物理的な分画の処理を行い、各画分の重量及び炭素含有率を定量した。また、物理分画と化学分画を組み合わせたZimmermannら(2006)の方法でも土壌の分画を行った。分画した土壌サンプルについて、加速器質量分析計を用いて14Cを分析した。 そのうち1点(埼玉県、熊谷)について、Zimmermannら(2006)の方法による実測土壌画分とモデルの比較を、全炭素量と14C値について行ったところ、RothCモデルのコンパートメントのひとつである不活性有機物(IOM)画分の量を実測により求めた場合、バルク土壌の全炭素量と14C値はともに、実測とモデルの一致精度が向上したことから、Zimmermann法の有効性が示された。しかし、分けられた各画分の14C値は、RothCのモデルで定義されている平均滞留時間とは一致しなかった。RothCモデルの5つのコンパートメントのうち、IOMはひとつだけ突出して年代が古く、滞留時間が50000年と設定されているのに対し、実測の画分の年代は古くても3000年程度であった。すなわち、実測に比べて、モデル中の画分は、年代の極端に若いものと極端に古いもので構成されており、各画分を平均したバルク土壌の結果が見かけ上一致しているだけであることが示された。IOMに相当する画分を実測で分画するのが困難であることが、モデルのコンパートメントと実測画分のマッチングを困難にしていることが明らかになった。 結論として、RothCモデルの概念的コンパートメントに合う土壌の分画法を開発するのは困難であるため、実測可能画分からモデルを構成させるアプローチの方が有望であるといえる。
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