研究課題
長距離輸送される炭素系物質濃度が比較的高いと考えられる長崎県五島列島福江島においては、2009年10月よりPM_<25>分級のエアロゾルを1週間の時間分解能で捕集を開始し、黒色炭素(BC)中の^<14>Cについては2010年5月のものまで分析が進んだ。別途採取されている沖縄本島辺戸岬でエアロゾルの分析結果と比較すると、初冬季~春季までの結果では、モダンカーボン、すなわち植物体起源の炭素の割合(pMC)が25~35%と比較的一定している辺戸とは異なり、福江でのpMCは24%以下と比較的低く状態からときおり35~45%と高くなる場合があり、間欠的にバイオマス燃焼の寄与を大きく受けていることがわかった。一方、BC中のδ^<13>Cについては、分析条件を詰めてきたところ1週間の時間分解能でもほぼ問題なく分析可能であることがわかり、約5サンプルを分析したところで東日本大震災が発生し、分析が止まってしまっている。2010年5月初旬から6月中旬までδ13Cは-26.0~-24,6‰とほぼ石炭燃焼と自動車排気ガスのフィンガープリントの中間に入ったものが多く、分析結果の妥当性を示唆している。ただし、5月初旬のデータに-22.6‰とかなり重いものがあり、分析時のコンタミネーションであるのか、あるいは発生地域の違いを反映しているのかについて今後検討が必要である。また、夏期の富士山頂において、付近の大気境界層起源のエアロゾルと自由対流圏エアロゾルを狙って、PM_<25>分級器付ハイボリューム・エアサンプラ2台を昼夜に分けて吸引を行い、2010年夏に関しては比較的良好なサンプルを得ることができた。さらに、大陸起源の気塊の輸送過程を調べるため、小笠原父島で実施している大気中ラドン濃度測定(冬季~春季のみ)の結果からは、BCとラドンの濃度ピークの出現は概ね一致するが、BC濃度が上昇せずラドン濃度のみ上昇するイベントもときおり生じており、今後、数値モデル的解析と併せて発生源地域・輸送経路との関係について検討を行う予定である。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (18件)
大気環境学会誌
巻: 46(2) ページ: 111-118
巻: 45(5) ページ: 227-234