東北区水産研究所若鷹丸の親潮域ブルーム調査(5月)に乗船し、カイアシ類に対するニュートラルレッドによる生体染色法適用の可否について検証を行った。この時期を主な加入期とする、E.bungiiおよびNeocalanusを対象種とした。検証の結果、生体染色によってE.bungiiでは成体雌卵巣が、NeocalanusC4-C5では後体部が、死亡個体よりも濃く染まることが確認されたが、体のその他の部分は生存/死亡にかかわらず、染色されることが明らかとなった。さらに、この現象は水温の高い10月に岩手県大槌湾において、C.sinicus成体雌を用いた検証でも確認された。一方、Oithona属やAcartia属などの小型種では、水温に関わらず生体染色法による生死判別が可能であったことから、染色剤取り込み活性が主に体サイズに代表される種特性に起因すると推定された。この問題点を克服するため、本法の改良を含めた現場非捕食死亡率測定法について研究協力者と情報交換・議論を行い、次年度以降の現場観測に備えた。また現場個体の飢餓レベル、環境ストレスの定量化を試みるため、核酸比測定用の検証実験を行い、分析用試料を採集した。飢餓はカイアシ類非捕食死亡要因の第一因として考えられるが、幾つかのカイアシ類種では未だに主要な餌料が判明していない。この知見不足を補うためサフィリナ属カイアシ類について摂餌生態について調査を行い、本グループがウミタル類を主要な餌としていることを世界で初めて明らかにした。
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