研究概要 |
森山堤防開削前後の本庄水域において,底質・水質・底生生物の調査を行った。開削により、境水道側からの海水が流入したものの、奥に進むに従いDOが低下した。酸素が十分に供給され、底質の有機物分解・硫化水素濃度低下により環境が改善されたのは、開削部から1km未満であった。改善された地点で最初に出現した二枚貝は、ヒメシラトリガイであった。 二枚貝個体群については、本庄水域内の5地点を選出し、月に1度の水深別定量調査を行った。優占したのはアサリ・ホトトギスガイであった。二枚貝は貧酸素化する水深4m以深では夏期に斃死した。水深3m以浅で比較的安定した個体群を形成するが、水深1mでも斃死がおこった。二枚貝の浮遊幼生調査は、モニタリングを1~2週に1回、広域分布調査を年2回行った。アサリについては、7月と10月に幼生の出現ピークがあること、水域内で分布に偏りがあることが分かった。アサリは、本庄水域内で、地点により個体群構造の変化が見られ、開削による環境変化との対応関係を調査するのに有望な種と判断した。 中海に出現するアサリ、サルボウ、ホトトギス、ヤマトシジミを含む二枚貝・巻貝幼生を遺伝子解析によって同定するためのDNAの抽出方法を検討するとともに、DNA-Barcoding法による同定方法を開発した。リアルタイムPCRによる検出法ではアサリ、ヤマトシジミではインターカレーション法による同定手法を開発し、4種同時判定のためのDLP法を検討中である。また、本庄工区の開削前と後の影響を調べるために、アサリに焦点を絞り、当研究室で開発したマイクロサテライトマーカーによる予備解析を行った。その結果、開削前の本庄工区内のアサリは、中海本湖とは異なる集団であることが明らかとなった。堤防構築により、本庄工区が中海本湖と分断されたことによってもたらされた可能性が高い。
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