研究課題/領域番号 |
21310021
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山口 啓子 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (80322220)
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研究分担者 |
浜口 昌巳 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 室長 (60371960)
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キーワード | 二枚貝 / 中海 / 本庄 / アサリ / 幼生 / Dual-labeled probe / 遺伝子交流 / 堤防開削 |
研究概要 |
継続的なモニタリング調査により、二枚貝幼生の出現時期と量は年次変動が大きいこと、初夏産卵は規模が非常に小さく、秋産卵が大規模である傾向が明らかとなった。幼生出現の変動は夏冬の気候に依存し、中海におけるアサリの産卵盛期は水温が18℃付近であることも明らかとなった。殻長組成を元にした個体群動態の結果および幼生の分布傾向、漂流ブイによる結果と合わせて、中海のアサリは秋産卵で生まれ風と潮流により湖内に広く分散し、貧酸素による斃死を免れた個体が翌年の秋に産卵、冬の間に親個体群はほぼ壊滅する、というパターンが明らかとなった。この基本パターンは、堤防開削によって変化することはないと考えられる。一方、サルボウガイの幼生分布および付着稚貝調査より、堤防開削によって生じた本庄工区西側からの海水流入によって中海本湖からの幼生供給が促進されていることも明らかになった。さらに、汽水性二枚貝のうち水産上重要な対照種にとって障害となるホトトギス幼生同定のためのリアルタイムPCR用Dual-labeled probeを作成し、中海で採集した試料を用いて特異性を検証した。アサリをモデル生物として堤防開削2年後の影響等を評価するために、昨年度に続いてマイクロサテライトマーカー(MSマーカー)による分析を行った。夏に前年度着底したと考えられるアサリ稚貝を本庄工区並びに中海本湖の計10か所で採集した。採集した試料の閉殻筋からDNAを抽出し、7つのMSマーカーで解析したところ、堤防開削により本庄工区内外のアサリ個体群の遺伝的均質化が進んでいることが明らかとなった。 以上のことから、中海の本庄工区の堤防開削は、二枚貝個体群に関して、海水流動の増加による幼生分散の拡大と均質化をもたらしたことが明らかとなった。
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