研究課題/領域番号 |
21310022
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
汪 達紘 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (90294404)
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研究分担者 |
筒井 研 岡山大学, 自然生命科学研究支援センター, 教授 (70108158)
佐野 訓明 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (00294405)
中村 和行 山口大学, 医学(系)研究科, 教授 (90107748)
藤田 洋史 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20423288)
荻野 景規 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70204104)
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キーワード | 生体影響評価 / カタラーゼ / 初代培養肝細胞 |
研究概要 |
この研究ではカタラーゼ遺伝子変異マウスの初代培養肝細胞を用いた酸化ストレス誘発有害物質のスクリーニングを簡便に行う手法の開発とその実用化を目指している。今年度は以下の成績を得た。 1.初代培養肝細胞のカタラーゼ活性:アカタラセミアマウスCs^bの肝細胞カタラーゼ活性は、正常マウスCs^aのそれに比し有意に低値を示した。また、各濃度(0.2mM、0.4m)の美白クリームの主成分であるhydroquinone(HQ)の添加により、Cs^a及びCs^b共に、高濃度になるにつれて、細胞カタラーゼ活性は減少傾向がみられ、アカタラセミアマウスCs^bの肝細胞カタラーゼ活性は、正常マウスCs^aのそれに比し有意に低値を示した。 2.Hydroquinone(HQ)の曝露による酸化ストレス関連因子への影響:H22年度の研究では、HQを両種マウスの肝細胞に曝露させると濃度依存的に細胞障害が引き起こされ、しかもカタラーゼ活性の低いCs^bマウスの方が細胞生存率が低く、カタラーゼ活性とは関連があることが明らかとなった。H23年度では、さらにHQ曝露による酸化ストレス関連因子への影響を検討した。そこて、0.4mMのHQが24時間曝露後において、Cytochrome P450 CYP2El mRNAの発現は、カタラーゼ活性の低いCs^bではCs^aより1.5倍増え、HQの曝露によって誘発された酸化ストレスが細胞毒性に関与したことが示唆された。一方、CYP2Bl mRNAの発現は、Cs^bではCs^aより弱く、カタラーゼ活性とは関連があることが明らかとなった。 3.Hydroquinone曝露による細胞内グルタチオンレベルの変化:Hydroquinoneを24時間曝露後では、酸化型グルタチオン(GSSG)レベルがカタラーゼ遺伝子正常のCs^a初代培養肝細胞に比し、Cs^bのほうが有意に上昇したことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に基づいて、化学物質曝露により惹起される、カタラーゼ遺伝子正常及び異常肝細胞の生存率の差異から、発現が酸化的ストレスによるか否かを評価し、その結果を、これまでに得られているカタラーゼ変異遺伝子導入大腸菌を用いた曝露結果と照らし合せ、両者の一致性を検証した。また、抗酸化物質の添加による、有害化学物質の細胞毒性に対する防御作用をWST-8法で同定し、抗酸化ストレス酵素群の遺伝子・蛋白質の発現に変化があるか否かも検討した。
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今後の研究の推進方策 |
カタラーゼ遺伝子正常及び異常肝細胞の生存率の差異から、毒性発現が酸化的ストレスによるか否かを評価するため、今後、酸化ストレス関連蛋白質の発現に変化があるか否かに力を入れ、化学物質に曝露後の細胞機能面での損傷の指標となるマーカーたんぱく質の同定を試みる。
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