研究概要 |
本研究の目的は,CO_2とオゾンが植物のテルペン類放出におよぼす長期影響を明らかにし,気候変動にともなう植物からのテルペン類放出量の推定モデルの構築に必要なデータを取得することである.本年度はオープントップチェンバーを用いたオゾンとCO2の複合暴露実験を実施した. 実験には,イソプレン放出種のコナラ属樹木2種類を用いた.イソプレンを日中常に放出するコナラとミズナラの3年生の実生を用いた.各処理区で各植物種計5個体を栽培した.暴露実験は,早春の萌芽前から落葉後の冬季まで実施し,ストレスに敏感な萌芽期,展葉期の影響を捉えるよう留意した.植物からのテルペン類の測定は2カ月ごとに実施し,オゾンと高濃度CO_2の影響を調べた. 長期の高濃度オゾンと二酸化炭素の複合曝露は、コナラとミズナラのイソプレン放出に影響を及ぼした。オゾン単独曝露において、イソプレン放出速度は低下した。しかし、葉内のイソプレンの前駆物質であるジメチルアリルニリン酸含有量は低下しなかったことから、放出速度の低下はイソプレン合成酵素活性の低下によるものかもしれない。高濃度二酸化炭素単独曝露においても、イソプレン放出速度は低下した。これは、他の植物を用いた先行研究と同様の結果であり、光合成によって固定された炭素がイソプレン生成に使われず、成長に使われた結果であると考えられる。複合曝露でも、イソプレン放出速度は低下した。しかし、オゾンあるいは二酸化炭素の単独曝露に比べて,複合曝露による相加効果、相乗効果によるさらなる低下は見られなかった。
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