研究概要 |
世界各国で自然資源の世界遺産登録を目指す運動が活発化するなど、世界遺産への社会的関心が高まっている。しかし、白神山地や屋久島では、世界遺産に登録されたことにより訪問者が急増し、過剰利用による自然環境への影響が懸念されている。本研究の目的は、環境経済学の観点から世界遺産の観光利用が環境に及ぼす影響を数量的に評価する手法を開発し、現実の世界遺産管理計画に対して適用することで、世界遺産の観光利用の今後のあり方を示すことにある。本研究が対象とする知床では、観光客が増加したことからヒグマに遭遇するリスクが高まるなど、観光客の安全性や生態系への影響が懸念されている。現地では、ツアーガイドを導入することで利用者の安全性が確保されるとともに生態系への影響が緩和されることが検討されている。しかし、事前に予約をしないと自由に入れる場所が制限され、ガイド料も必要となることから観光客が減少する可能性があり、地元経済への影響も懸念されている。そこで、本研究では、こうしたツアーガイド制度の社会経済的影響を分析する。平成22年度は,国立公園における事故のような発生確率の低い事故リスクに対して利用者がどのように認識しているのかを確認するために,経済実験による分析を行った。特に山岳地域の事故には山岳保険が用意きれているが,山岳保険の利用率はきわめて低い。山岳保険の普及を阻害する要因を明らかにするために,保険購入に関する経済実験を行った。
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