本研究課題ではゲノムDNA損傷応答における役割が明らかでない核小体について、その核小体に含まれるタンパク質がゲノムDNA全般の修復機構に関与するのか、核小体に存在するrDNA遺伝子に特異的な修復機構があるのか、核小体、rDNAの異常がゲノム不安定性・発癌へつながるのかを解析し、核小体制御のゲノム安定性への役割を明らかにするために、平成22年度はnucleolinをはじめとする核小体タンパク質のDNA二重鎖切断損傷(DSBs)応答における役割を明らかにすることを目的として研究を行った。nucleolinについて平成21年度の解析から放射線DNA損傷発生時にATM依存的細胞周期チェックポイント、相同組換え修復(HR)に機能することを既に明らかにしていたが、もう一つの主要な経路である非相同末端結合(NHEJ)修復の重要因子であるKUタンパク質とnucelolinが結合することを免疫沈降法で明らかにし、NHEJ修復活性に必要であることをもsiRNAを用いたpEJレポーターアッセイを用いて明らかにした。DNA修復時にクロマチン構造の転換が起こることが知られているが、nucleolinがこの過程で機能する可能性を示した。このようにnucleolinのDNA損傷における多彩な機能について世界に先駆けて明らかとした。さらに、もう一つの核小体局在タンパクとしてWRNタンパク質の機能の解析を行った。その結果、WRNは外因性のDNA損傷が存在しないときにはDNA複製に機能するPCNAタンパク質と結合して損傷乗り越えDNA合成(TLS)を抑制しているが、紫外線などでDNA損傷が発生するとATM/ATR依存的にリン酸化、それに続いて分解され、PCNAがかい離、Rad18依存的にモノユビキチン化され、TLSが活性化するという核小体タンパク質WRNの新たな機能を明らかにすることができた。
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