研究課題
先にがん化細胞で最初に普遍的に見られる変化が染色体の異数化であることを示した。そうであれば、発がんに関係する標的は、染色体異数化を引き起こす細胞内構造であると推測し、テロメア、サブテロメア、動原体、中心体などに注目して検討した。その結果、得られた結果から標的は中心体であると結論した。通常、中心体が増加した細胞が多極分裂を起こすと通常二個の娘細胞に受け渡されるべき染色体が三個以上の細胞に分散されるので、全ての遺伝情報が個々の細胞に受け継がれる可能性は極めて低く、大半の細胞は死を迎える。しかし、増えた中心体が二極に集まって疑似二極分裂を起こす場合は、複数の中心体が集合した極から複数の紡錘子が伸び動原体にメロテリック結合を生ずる。そして、そこでは染色体分離時に力学的不均衡が生じ染色体不均等分離を介して染色体の取り残しがおこる。この場合、染色体は無傷でまるごとどちらかの娘細胞に取り込まれ染色体異数化細胞が生ずる。染色体を失った細胞では遺伝情報の欠失が起こり生存できないが、染色体を余分に取り込んだ側の細胞では、遺伝情報の欠失は起こらないので生存に支障はないと思われる。事実、我々の研究では、染色体数が減少している細胞を得ることは全く出来なかった。されに、染色体が異数化した細胞では、遺伝子発現が大きく変化し種々のがん形質を発現するようになる。この現象は、放射線被ばく時に限らず自然発がんの場合にも高頻度に見られる。これらの結果から、我々は、「中心体構造異常⇒染色体異数化⇒細胞がん化」が、放射線発がんの圧倒的主経路でありその機構は自然発がんの機構と同じと結論した。
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http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/rb-rri/