NO発生剤による放射線抵抗性および遺伝子安定性の獲得の解析 あらかじめのNOラジカル発生剤(ISDN)処理による放射線感受性と染色体異常出現頻度に与える影響について検討した。ヒト肺がん由来のp53遺伝子欠損型のH1299細胞に、正常型p53遺伝子および変異型p53遺伝子を導入したH1299/wtp53およびH1299/mp53細胞を使用した。その結果、H1299/wtp53細胞では、あらかじめ6時間前をピークに、低濃度(5μM)NOラジカル発生剤処理することで放射線による生存率が抵抗性になり、アポトーシス出現頻度が減少した。さらに、染色体異常(二動原体)の出現頻度も減少した。また、この現象はNOラジカルスカベンジャー(cPTIO)処理で軽減した。一方、高濃度(500μM)NOラジカル発生剤処理することで放射線による生存率が感受性になり、アポトーシス出現頻度が増加した。さらに、染色体異常の出現頻度が増加した。これに対して、H1299/mp53細胞ではNOラジカル発生剤処理による放射線感受性および染色体出現頻度の変化は認められなかった。以上、本研究によって、正常型p53遺伝子を有する細胞にのみ、NOラジカルは濃度の違いによって二相性の放射線感受性と染色体異常の出現頻度を示すことを明らかにした。
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