研究概要 |
平成21年度、22年度と順調に必要とされる陽子線ビームの照射場の構築、ビーム実験の実施、宇宙放射線線量計の解析、各国宇宙機関・大学等の結果の取りまとめを行ってきた。しかしながら、平成23年度の前半は、東北大震災に伴う、福島第1原子力発電所事故への対応のために、研究代表者は延べ50日間、福島に滞在するなど、住民、原発作業者、公共機関職員等の被ばく医療支援・放射線管理等の職務につき、本研究課題を実施できなかった。その後も福島県内外の線量マッピング等の業務も行いつつも、平成23年度後半には、ビーム照射場の構築、外国人研究者と共にビーム実験の実施、線量計の解析等を行うことができた。また、国際学会(WRMISS)において、平成21年度、22年度のとりまとめ結果を発表し、また、その内容の議論が進めるなど、年度前半の遅れをかなり取り戻すことができた。 現在、平成24年1月に実施したビーム実験のとりまとめを行っているところあるが、3年間の研究の結果、以下の成果がえられた。 1.陽子線ビーム照射場について、放医研サイクロトロンにおいて、30,40,70,80MeVに対して、約70mm直径で±5%の強度平坦度を構築することができた。また、国立がんセンター東病院の陽子線治療用サイクロトロンの照射場において235MeVの陽子線を利用する事ができ、0.45~2.0keV/μmのLET(線エネルギー付与)の広い領域で、線量計の照射を行う事が可能となった。 2.各国の線量計の解析結果を比較したところ、同じ研究機関が使用する線量計においても応答が異なるが、異なる研究機関の同種の線量計においてはその応答が比較的関係している事が判明した。線量計の種類毎に、LETに対する応答曲線を明らかにし、低LET領域での線量計の評価としてまとめて、国際学会にて報告するよう準備を進めている。これにより、宇宙放射線線量計の理解が進み、宇宙飛行士の線量管理に有効に役立てることが可能になる。
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