研究課題
本研究では、トランスクリプトーム及びプロテオーム解析を通じて明らかになったシグナル伝達系に関わる遺伝子(タンパク質)に関して、様々な化学物質(特に天然試料などの混合物)に対する応答を遺伝子の発現レベルにおいてプロファイリングすることにより、様々な成長因子に対する膜受容体経由のシグナル伝達経路との共役経路を明らかにすることで、従来明らかにされた核内受容体経路だけでは説明できない生理作用のメカニズムを明らかにすることを目標にした。我々は、まず、(1)エストロゲン応答遺伝子によるシグナルカスケードの同定を行ない、さらに、(2)様々な化学物質(ビスフェノールAなど)を用いた膜共役系を含めた遺伝子応答のプロファイリングを取得した。さらに、様々な阻害剤を用いて受容体やシグナル伝達経路について解析し、新しいGPR30受容体経由のシグナル伝達経路を明らかにした。また、連携研究者との共同研究においては、(3)ラット脳の分化におけるエストロゲン応答シグナル伝達系の解析を進め、日齢変動によるタンパク質のリン酸化などの変動を解析することで性分化に関与するシグナル伝達経路について解析を行った。さらに、上記の(1)~(3)項の成果をもとに、(4)天然試料などの混合物を用いた遺伝子応答のプロファイリングを進め、様々な天然試料や環境試料(アガリクス抽出物及び石油分解物)、及び、その成分や植物エストロゲンについて、エストロゲン活性評価を行ったところ、いくつかの試料についてはエストロゲン様プロファイルを示しながらMCF-7細胞の増殖活性は示さなかった。このような化学物質は他にも存在することから、これらの化学物質を総称して「サイレントエストロゲン」と命名した。これらの新しいタイプのエストロゲン様化合物は、膜共役系や細胞増殖シグナル伝達経路を含めてエストロゲンシグナル伝達経路に特徴があるものと考えられる。
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