研究概要 |
鉄ポルラィリン触媒による臭素系難燃剤テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)と、臭素系難燃剤が入ったプラスチック中に含まれる臭素化フェノール類(BPs)の酸化生成物に及ぼす腐植酸の影響を解明することを目的とする。我々は、p-ヒドロキノン(HQ)を腐植酸(HA)のフェノール部位に修飾(HQ-HA)後、鉄テトラヒドロキシフェニルポルフィリン(FeTHP)をホルムアルデヒド縮重合反応により導入したHQ-HA-FeTHP超分子触媒が、塩素化フェノールの酸化分解促進に有用であることを見出した。この触媒により種々の反応条件でBPsに対する酸化分解を試みたが、塩素化フェノールのような脱ハロゲン化を観測しうるには至らず、大きな酸化分解の促進は見られなかった。したがって、鉄ポルフィリン触媒によるハロゲン化フェノールの酸化分解の度合いは、触媒の種類と言うよりは反応基質の性質に依存すると考えられる。本年度は、2,4,6-トリハロゲン化フェノール(TrXP)を対象としてFeTHPおよびHQ-HA-FeTHP触媒による分解、脱ハロゲン化、酸化生成物に及ぼす置換ハロゲン元素の影響に関する検討を行った。その結果、分解率および脱ハロゲン量はフッ素>塩素>臭素>ヨウ素の順に高くなり、電気陰性度の序列と一致した。これは、フッ素など電気陰性度の大きな置換基の強い電子吸引性が結合炭素の求核性を増加させ求核試薬として作用するH_2Oなどとの置換反応を起こりやすくすることに起因すると考察した。一方、蛍光プレートリーダーを使用し、P.subcapitataを供試生物として用いた藻類生長阻害試験の検討を行った。また、この方法を利用し、TBBPA及びその酸化分解生成物として考えられる化合物の毒性と腐植物質共存下による毒性変化を評価した。その結果、腐植物質-TBBPA複合体はTBBPAだけの場合に比べ低い毒性を示した。
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