研究課題/領域番号 |
21310048
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
福嶋 正巳 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (40344113)
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研究分担者 |
倉光 英樹 富山大学, 理工学研究部, 准教授 (70397165)
長尾 誠也 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (20343014)
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キーワード | 環境材料 / 環境技術 / 水質汚濁・土壌汚染防止・浄化 / 触媒・化学プロセス / 超分子化学 |
研究概要 |
TBBPAの脱臭素化・無害化を促進する鉄ポルフィリン触媒系を見出すことを目的として、水溶性鉄ポルフィリン触媒をシリカ担体に担持した触媒を合成した。この触媒は、ポルフィリンの中心金属である鉄の軸方向にシリカへ担持させたピロールの窒素を配位させたもので、pH 4 - 8でほぼ100%近くのTBBPA分解率を示した。また、廃棄物浸出水のpHである8において、浸出水中の主夾雑物である腐植酸の影響に関しても検討を行った。その結果、腐植酸が共存すると分解速度は遅くなり反応を阻害するが、50 mg L-1までの共存であればほぼ100%の分解が可能であることがわかった。さらに、担持鉄ポルフィリン触媒の再利用性に関して検討した結果、10回使用しても活性は変化せず、鉄ポルフィリン触媒自体の分解も起こっていないことが、反射吸収スペクトル測定の結果から明らかになった。以上の結果から、シリカヘピロールの軸配位で担持した鉄ポルフィリン触媒が、水溶液中のTBBPAの分解に対して有用であることが示唆された。一方、鉄ポルフィリン触媒と構造が類縁しており高活性が期待できる鉄フタロシアニン触媒に関しても、TBBPAに対する分解性を均一触媒系により検討した。鉄フタロシアニン系でもTBBPAの酸化分解が弱酸~弱塩基の広いpH範囲で可能であることがわかった。T一方、腐植酸の共存が酸化生成物にどのような影響を及ぼすのかに関して、GC/MSを用い検討を行った。腐植酸が共存しない場合、4-(2-ヒドロキシプロピル)-2,6-ジブロモフェノールが4-(イソプロピレン)-2, 6-ジブロモフェノールへ酸化され、それが酸化重合して高分子の臭素化フェノールを生成する酸化経路を明らかにした。しかし、腐植酸が共存するとこれらモノマーの反応中間体が腐植酸へ結合し、毒性の低い複合体を形成することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時には、鉄ポルフィリン触媒の自己分解を抑制し、実際の浸出水へ適用しやすい形にすることを目的として、固体支持体へ担持する触媒を合成することを掲げた。また、鉄ポルフィリン触媒に替わる新たな触媒を探索する目的として、鉄フタロシアニン触媒についても検討を行うこととした。H23年度は、計画通りにこれらの内容に関する検討を行い、各々について結論を出すことができ、関連の学会発表や誌上発表も行うとともに、現在はさらなる論文投稿の準備を行っている。従っておおむわ須調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
担持型鉄ポルフィリン触媒に関しては、さらなる分解速度の向上と腐植酸の阻害を可能にする触媒の開発をH24年度目標とする。また、鉄フタロシアニン触媒は、鉄ポルフィリン触媒に比べ自己分解の失活速度が10倍遅いことが、H23年度の研究結果から明らかになった。鉄フタロシアニンに関しては、酸化活性種が明らかにされていないので、どのような活性種として存在しているのかを明らかにすることもH24年度の研究課題としたい。また、鉄フタロシアニン触媒を、固体に支持した担持型触媒も合成し、実用に対する基礎資料を得ることもH24の課題として考えている。
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