研究概要 |
昨年度までの研究結果から、腐植酸(HA)の共存はいかなる条件でも、鉄ポルフィリン触媒によるテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)の酸化分解を阻害することがわかった。ゆえに、HAが10 - 200 mg L-1程度含まれている処分場浸出水中のTBBPAを鉄ポルフィリン触媒で分解する場合、HAによる阻害を除く必要があると考えた。今年度は、表面電荷が負の陽イオン交換樹脂に鉄テトラメチルピリジルポルフィリン(FeTMPyP)を修飾し、巨大な負の静電場を持つHAを反応場近傍から排除して疎水的なTBBPAの分解率向上を試みた。TBBPA初期濃度50 μM, KHSO5 1 mM, 反応時間4 hの条件で、pH 4-10における分解率を測定した。その結果、pH 4-7までTBBPAはHAの有無にかかわらず分解率10%以下であった。しかし、pH 8以上ではHA無しで分解率は92-98%、HAが25 mg L-1共存しても83-95%であり、HAの共存による若干の分解率の低下が見られた。また、pH 8-10における脱臭素化量は、分解されたTBBPAのモル数に対して0.4-1.2倍であり、pHの増加およびHAの共存により増加する傾向が見られた。処分場浸出水のpHが弱アルカリ性(pH 8-10)を示すの、合成した担持型触媒は浸出水中のTBBPAの分解に対しては有用と考えられる。さらに、鉄ポルフィリン触媒の類縁体である鉄フタロシアニン触媒をシリカに担持した触媒も合成し検討を行った。TBBPAの酸化に対する触媒活性は、触媒の粒径が小さくなるほど高くなることを見出した。また、粒径が小さな触媒ではHAの共存による阻害も小さくなることがわかった。
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