研究概要 |
水環境中のmicrocystin分解機序の解明および自然水域におけるmicrocystin分解能の評価を行うとともに,昨年度の成果microcystin分解酵素遺伝子群の分解菌細胞内での発現解析および本年度で得られた成果を利用して安定で高効率のmicrocystin生物処理系の構築を目的として研究を実施した。 初夏のアオコ発生からその消失までの期間に現地調査(霞ヶ浦)を実施し,試水中の定量PCR法によるmicrocystin分解菌の動態解析とmicrocystin濃度分析を行った。また,今年度は浄水場で導入されている生物膜法の処理施設に対しても実施しmicrocystin分解能を評価した。 比較対象としたタイ王国の養魚池よりも霞ヶ浦の有毒アオコの方がmicrocystin濃度は高かったため,環境因子が産生能に関わることがわかった。またmicrocystin分解菌はmicrocystin濃度依存的にポピュレーションを変動させることがわかった。さらに生物膜法はmicrocystinを分解し,上水へのmicrocystin混入を阻止する有効な手段となっていることを示した。また安定で高効率のmicrocystin生物処理系の構築のために,浄水場の生物膜法処理施設から生物膜を採取し,様々な環境因子におけるmicrocystin分解活性を分析した。その結果,硝酸態窒素濃度によりmicrocystin分解活性が亢進するが、リン酸態リン濃度によってはその活性が阻害されることがわかった。また,microcystin以外の炭素源がある場合においてもその活性が阻害されうることがわかった。以上の知見がどのような機構で起きているのかは未解明であり,この未解明な部分を明らかにしていくことは,microcystin生物処理における分解活性の制御法の構築につながる。
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