研究概要 |
1)殺虫タンパク質上の受容体結合部位の解析 アミノ酸のシステインへの置換とそのシステインへの立体障害の導入を利用してCry1Aa型殺虫タンパク質の受容体結合部位を解析した。その結果、ループ1,2および3部位は共にカドヘリン様受容体と呼ばれるBtR175分子に接近・密着する部位であることが示唆された。また、特にループ2はBtR175分子への直接的な結合に関与する部位であることが示唆された。また、ループ1,2部位は、他の分子結合すると殺虫タンパク質をオリゴマー化する性質を持つことが明らかになった。すなわち、これらの部位は、Cry1Aa型殺虫タンパク質が受容に結合した際にオリゴマー化して細胞膜に穴をあける機能を獲得するためのスイッチの機能を持つことが明らかになった。従って、これらの部位は変異を入れて受容体への結合性を向上させることを狙う上で最も合理的な部位であると思われた。 2)高活性体をとる変異導入法とスクリーニング法の検討 高活性の変異体を獲得するための基盤技術の完成を目指して、カイコとそれに効くCry1Aa型殺虫タンパク質のモデル系を用いて実験を進めた。具体的には受容体結合部位の候補と考えられる、ループ1、ループ2、ループ3領域などに変異を入れた合計11種類の変異体ライブラリーを作製し、受容体に結合性を増したクローンをパニング法で選抜することを試みた。しかし、得られたクローンのカドヘリン様受容体(BtR175分子)への結合親和性をBiacoreを用いて評価したところ、結合親和性が向上しているクローンは少数で、しかも親和性の向上幅も高々3、4倍止まりであった。幾種かの解析の結果、これはスクリーンング系が十分に機能していないことに由来すると考えられた。これまで準備してきたスクリーニング系がうまく働かない理由の原因を究明し再度スクリーニングを試みる必要性が生じた。
|