研究概要 |
1. Cry1Aa毒素変異体ファージディスプレイライブラリーからの受容体への結合親和性が向上した変異体の獲得 カイコガに対しより活性が強い毒素変異体の獲得を目指して、ループ3領域に変異を入れたCry1Aa毒素のファージディスプレイライブラリーをカイコガ受容体BtR175に対しパニング法でこれまでより大規模にスクリーニングした。その結果、受容体への結合親和性が5,10および17倍向上した変異体が獲得できた.これらの変異体の殺虫活性の向上に期待がもたれた。 2. 変異の足し算による結合親和性の向上化の試み 既にCry1Aa毒素のループ2領域の変異体から受容体への結合親和性が4倍向上したものがとれていた。また、1.で述べた結合親和性の向上をもたらしたループ3領域の変異は厳密に言うと隣り合った2か所に分別できた。ところで、抗体の進化分子工学では異なる場所の変異を足し算することで変異効果を相乗的にますことが可能であった。そこで、ループ2と2か所のループ3の変異を1分子内に足し算することを試みた。しかし、2か所の変異を持つようになった分子のほとんどはトリプシンに対して感受性となり、活性型の毒素の調製が不可能になった。一方、トリプシン耐性を保った分子が2種るいだけ獲得できたが、それらの受容体に対する結合親和性は組み合わせ前の変異体の結合親和性より低かった。したがって、トリプシンや消化液に耐性であることが求められるCry毒素の場合は、このような方法で分子を更に進化させるのはそれほど容易ではないことが明らかになった。
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