研究概要 |
初年度は,岩石内部にトラップされるCO2量をX線CT装置を用いて計測した.トラップ量推定モデルの構築をめざし,様々な岩石種に対してデータを取得した.また,トラップされたCO2の3次元的な分布と岩石構造(空隙率,空隙径分布など)を3次元的に計測することにより,トラップメカニズムの解明のための基礎的な知見を得たこれを受けて昨年度は,本年度は残留ガストラップ量の最適化を目的として,初期ガス飽和率を制御することにより,残留ガストラップ量を最適化する方法について検討を行なった.残留ガストラップを効果的に用いるにはCO2と水を同時に圧入することが効果的であることを明らかにした.これらの成果から,残留ガストラップ量ほ初期ガス飽和率に非常に強く影響を受けることが明らかとなってきた.そこで,本研究では,残留ガストラップ量の制御を目的に,初期ガス飽和率に与える,注入速度や重力の影響を明らかにし,無次元量での整理を試みた.実験は超臨界状態と常温常圧状態でのモデル多孔質に対して行い,得られた結果からガス飽和率をキャピラリー数,ボンド数の関数として整理した.このモデルは,多孔質内部のガス飽和率を予測するために使用することができる.また,多孔質媒体の不均質性が与える影響についても検討を行った.不均質多孔質媒体を対象として,X線CTによるポアスケールを可視化した計測手法を用いた.流れ方向に平行な不均質性が存在する場合,流体は通りやすい層のみを通過し,それ以外の層はガス貯留に寄与しない.一方,流れと垂直方向に不均質性が存在すると毛管力の違いが流動抵抗として作用し,ガス飽和率の上昇やトラップの増大につながることが見いだされた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の目的に沿って研究は進捗している.特に,本年度は多孔質媒体内部にガスを注入した際の飽和率のモデル化について当初の予定を上回る成果が得られており,CCSの実用化に際して大いに貢献する結果が得られた.また,そのほかの研究開発項目については当初の予定に即して進捗しており,おおむね予想される結果が得られている.以上のことから本研究開発はおおむね順当に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
二酸化炭素地下貯留技術に関して,残留ガストラップ現象の果たす役割やその物理的なメカニズムがほぼ明らかになってきた.残留ガストラップの最適化には,ガス注入プロセスが大きく寄与しており,貯留層の特性に適した注入方法を選定する必要がある.それは多孔質媒体ほ不均質性も含んでおり,最適な方法を決定する上での指針が明らかになってきた.今後は,これらの成果を集大成してマイクロフォーカスX線CT装置を用いたポアスケール計測で残留ガストラップ現象のモデルを構築する.本研究で培ったポアスケール計測技術は,石油資源開発,地熱資源開発,土壌汚染修復などに適用することができ,波及効果についても検討を行う.
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