研究概要 |
鉄鋼業における水素の有効利用は、日本全体のCO2削減問題に大きく寄与する。 そこで本研究では、現行高炉における積極的な水素導入に加え、コークスを使用しない完全水素高炉を目指した場合の可能性を調査することが主目的である。 前年度(平成21年度)は、四流体高炉シミュレーションモデルを改良し、高炉内における水素の反応を的確に再現出来るようにした。特に、シミュレーションモデルに導入された反応式は、水蒸気によるコークスのガス化反応に関して、Kashiwayaらが求めた水性ガス反応の式である。従来のガス化速度式は、その実験温度範囲内では正しい値を与えるが、高温領域で反応速度が減少してしまう。kashiwayaらの式は、低中温領域で、実験値に近い値を与えるだけでなく、1500℃以上の高温領域において指数関数的に速度が上昇する一般的な炭素の反応挙動に一致した値を与える式である。本研究で開発したシミュレーションモデルは、高炉内の水素挙動を適切に表していることが分かった。 平成22年度は、得られたシミュレーションモデルを用いて、炉内に水素を導入した場合の,影響を解析した。約40%以上の水素量まで炉内に吹き込むことが可能であり,同時に生産性も上昇することが分かった.平成23年度は,これらの結果をまとめる予定である. さらに,水素還元によって得られる鉄が高純度であることを熱力学的に明らかにした.この結果を実証刷るために,実際に水素還元で金属鉄を製造し,さらに水素雰囲気中で溶解して得られた鉄の評価を行う予定である.
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