研究概要 |
近年、ナノ結晶の形態制御にゲルをテンプレートとして用いる方法が注目され、盛んに研究が行われている。これまで、オクタデシル基を鎖長にもつアミドアミン誘導体(C18AA)のトルエンゲル中に塩化金酸を抽出した後、55℃で還元剤を添加すると、直径約2nm、長さ数μmの金ナノワイヤーが合成できることを報告してきた。しかし、ワイヤーが得られる温度領域は約50℃~70℃に限られ、常温での合成は困難であった。そこで本年度は、C18AAと鎖長が異なる誘導体を合成し、金ナノワイヤーの低温合成について検討した。 C18AAの誘導体は、長鎖がドデシル基(C12AA)、テトラデシル基(C14AA)およびヘキサデシル基(C16AA)のものを合成した。金ワイヤーの合成は、加熱溶解した各活性剤のトルエンゲル(2.0wt%,10g)にHAuCl_4を加えて撹拌し、油溶性の還元剤であるLiEt_3BHを100μl添加して行った。Cl2~Cl6AAから合成したナノワイヤーの直径は約2nm、長さは数ミクロンであり、Cl8AAのものとほぼ同じであったことから、ワイヤーの直径および長さはアミドアミン誘導体の鎖長には依存しないことが明らかとなった。さらに、鎖長によって、ワイヤー合成の最適温度が変化し、室温合成にも成功した。これは、鎖長が短くなるとゲル化温度が低下し、ワイヤー合成の最適温度が下がるためと考えられる。また、ゲルが少し融けた状態であればナノワイヤーと粒子が生成するが、完全にゲル状態では網目状のワイヤーが生成することも明らかとなった。
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