研究概要 |
当年度に実施した研究成果を以下に記す. 1.磁化反転探針部:ハードディスク装置内で使われている記録ヘッドを取り出し,FIB微細加工装置を用いNiFe磁性体を10μm程度に加工し,記録ヘッド内のポールピース(磁場発生部)直上に成形する技術を立ち上げた.この微細加工したNiFe磁性体が探針部となる.現在,3個の磁性探針を作製した.また,ヘッド上の磁性体の磁化方向をカー顕微鏡で評価する技術,およびカー効果を利用して磁性を評価(ヒステリシスループ)する技術も立ち上げ,NiFe磁性体探針部の磁性評価を行っている.これまでNiFe膜厚が数μmまでの磁化反転まで確認することができた. 2.STMヘッド部:磁性体探針部に記録ヘッドを使用し,その内部にあるマイクロ電磁石を磁性探針の磁化反転に利用する.この電磁石を駆動するため,電流を導入する必要があるため,STMヘッド部は通常のものから大きくデザインを変更する必要がある.また,電磁石に交流を通電するため,ノイズ対策が非常に重要になってくる.現在,STMヘッド部の設計,製作,組み立てが終わり,ダミーの磁化反転探針(磁性探針を載せていない磁気ヘッド)を使用し,ノイズ評価を行っている.当初,電磁石に交流電流(10mA程度)を流すと,プリアンプ(10^9V/A)出力に1V程度の誘導電圧(ノイズ)が生じてしまったが,配線のシールド,探針マウント部のデザイン変更(静電シールド)等対策することで,現在10mV以下に減少することができた.現在,このダミーの磁化反転探針にPtIr探針(非磁性)を取り付け,HOPG試料のSTM観察を行っている. ダミーの磁化反転探針でのHOPG試料のSTM観察を行い,十分ノイズが小さいことを確認した後,本番の磁気ヘッド上に作製した磁性探針を使用し,超高真空中にて磁化方向に依存したトンネル電流の検出を行う予定である.
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