研究概要 |
今年度の実施計画は,1)磁化回転変調法による磁性情報の検出,2)磁化回転変調伝による磁区像の取得の2つである.これまで開発した磁気ヘッドを使った磁化反転変調磁性探針の中に,ヘッド電流の大きさを制御することにより,磁化方向の制御ができる磁性探針があることを確認した.ただし,x方向には磁化を反転することはできるが,y方向にはy軸から60°程度も傾くため,y成分の信号としてはx成分の半分程度しか得られない.この探針に関しては磁区像(x成分)の観察に成功した.また,当初の形状異方性を利用した磁性体を磁気ヘッドに載せた探針をMOKEにより磁性評価を行った.ヘッドに流す正弦電流にしたがって磁化のx,y成分が現れるが,その振舞いは複雑で,現状2成分検出用磁性探針として使用できるものではなく,磁区像の取得には至っていない. その他として,磁化反転変調方式にてスパッタ清浄化したNiFe多結晶薄膜のスピン像を得ることに成功した.この薄膜はアニール等で結晶性の回復は行っておらず,今回初めてスパッタ清浄化のみの試料でスピン像と凹凸像の同時観察に成功した.このような数ナノメータの凹凸のある合金試料では,これまでSP-STMで観察が行われておらず,この結果は本手法が多くの凹凸のある試料,合金等に適用可能であることを示している.また上記試料でのスピン信号(トンネル電流の非対称性)δのバイアス電圧依存性を調べ,-3~1 Vの範囲でδがほぼ5%であり,バイアス電圧依存性はあまりないことが分かった.さらに磁気記録媒体にFeを薄膜を蒸着した試料のスピン像観察を試み,数ナノメータの分解能で凹凸像とスピン像の同時取得に成功した.凹凸像から媒体表面は10 nm程度の結晶粒より構成されていることが分かり,同一視野のスピン像から磁区が大きく拡がっていることが分かった.
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