本研究の目的は、次世代太陽電池の一つとして期待されている半導体量子ドット増感太陽電池の光電変換特性の向上を目指して、(1)ナノ構造(ナノ粒子とナノチューブ)TiO_2光電極に溶液成長法で半導体量子ドットを作製しその評価を行い、(2)(1)の系に対して、改良型過渡回折格子法を用いて光励起キャリアダイナミクスの評価を行い、光電変換効率向上と関連するメカニズムを解明することである。 平成22年度では、主に以下の研究成果が得られた。 (1)半導体量子ドット吸着したTiO_2光電極の作製と評価 ナノ粒子TiO_2光電極と陽極化成で金属Tiの上にTiO_2ナノチューブ光電極を作製し、簡便な化学手法による半導体量子ドット(CdS、CdSe、PbS)の作製・吸着方法とZnSによる表面修飾について検討し、それぞれの最適な条件を同定した。その結果、CdSe量子ドット増感TiO_2ナノチューブ太陽電池とCdS/CdSe複合型量子ドット増感TiO_2ナノ粒子太陽電池はそれぞれ、1.8%と4.8%の光電変換効率が達成された。これらの値は、現在世界トップレベルである。 (2)光励起キャリアダイナミクスの評価 上記(1)で作製した半導体量子ドット吸着TiO_2光電極に対して、改良型過渡回折格子(TG)法を用いて光励起キャリアダイナミクスの評価を行った。CdSe量子ドットの光励起電子とホールのダイナミクスを分離して測定できることを実現し、電荷分離は数ピコ秒以内で完成することを見つけた。また、TiO_2電極への吸着方法と条件および量子ドットのサイズにより、CdSeからTiO_2への電子移動速度が顕著に変化し、光電変換効率に強く影響を与えることが見られた。また、ZnS表面修飾により、CdSe量子ドット増感太陽電池の光電変換特性と光励起キャリアダイナミクスが著しく変化することを確認できた。 (3)PbS半導体量子ドットの多重励起子生成(MEG)の評価 TG法により、PbS量子ドットにおけるMEGの発現を確認でき、単独半導体量子ドットにおけるMEG発現条件と発現時間を見出した。
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