本手法は、CTにおける断層像の濃度密度分布を、充分な数の微小点(2値のドット)の集合で近似する方法で、従来の逆投影に代わって、個々の点の移動と再配置によって投影データを満たす微小点密度分布を再構成する。(ここで、投影方向の点の積算分布を投影強度分布に置き換える。)研究の結果、個々の点の移動と再配置に関する最適なアルゴリズムが求められた。その概要は次のようである。(1)個々の点を独立に扱い、与えられた投影データに対して、個々の点全てに関して、断層面内で投影データと合致させるために移動させる優先度の順位付けをする。(2)その順位に基づいて、最も投影データとの不一致が解消する位置に点を移動する。このアルゴリズムに加えて、課題の試料傾斜角度制限による"情報欠落"を解消するための拘束条件を見付け出し、それを踏まえた点移動のアルゴリズムも考案した。それは、2値の構造物(組成が1種類の試料に該当)において述べると、周囲に隣接する点どうしの分布に関する密度を求め、それに対する閾値を設定し、閾値以下の場合にはその閾値以上の位置に移動させるアルゴリズムである。なお、このアルゴリズムは組成数が多い一般試料の断層像を演算することにも拡張できること発見した。 以上のアルゴリズムをモデルシミュレーションと連携研究者が実験したナノ複合材料の微粒子試料に応用したところ、予備的結果ながら、見事に課題の情報欠落が解消し、基本アルゴリズムが完成した。また、約5分の1に投影像枚数を減らしても概ね情報欠落は見られず、電子線損傷の解消に繋がる結果が得られた。
|