研究概要 |
本研究は平成21年度~平成23年度の第1年目にあたり、ZrO_2/炭素クラスター複合体の光触媒活性を向上させるための機能要素の抽出を目的として、1.有機マトリックスの種類の検討,2.複合体の比表面積と触媒活性の相関,3.CO_2賦活処理と光触媒活性との相関に関する検討,4.助触媒の種類ならびに担持法の最適化を行った。その結果、有機マトリックスの種類としては、芳香環骨格を有し、比較的強いマトリックスを形成するフェノール樹脂を用いることで、グラファイト構造が発達した電荷分離能の高い炭素クラスターマトリックスを形成することが判明した。また、フェノール樹脂のオリゴマーを用いる手法によって、比表面積が300m^2/gを上回る複合体が得られることが判明したが、還元雰囲気下焼成によって複合体表面が疎水化し、光触媒活性が低下することも明らかとなった。そこで、得られた複合体のCO_2賦活処理を行なったところ、比表面積は500m^2/g以上になるものの表面の疎水化は改善しなかったため、O_2による表面親水化処理を試みた。複合体を空気雰囲気下300~500℃で焼成することで複合体表面が親水化され、光触媒活性の向上が認められた。以上の結果より、複合体の光触媒活性の向上には、芳香環を有する有機マトリックスを用い、その表面を親水化することが極めて重要であることが判明した。さらに、複合体の酸化活性を向上させるための助触媒として、MnO_2, CeO_2の担持を試みたところ、双方の系において多電子酸化反応を伴う酸化サイトが形成することが明らかとなった。特に、MnO_2系においては、2価のマンガンイオンを含有した水溶液中から光酸化を行うことでMnO_2が析出したが、MnOの形成も認められ、酸化物の価数制御に課題があることも判明した。
|