研究概要 |
本研究は平成21年度~平成23年度の第2年目にあたり、H21年度に得られた結果に基づき、ZrO_2/炭素クラスター複合体構築の最適化条件を目的として、1.炭化過程にいて形成されるZrO_2粒子の組成の検討,2.炭素クラスターの組成の検討,3.欠陥構造を含むZrO_2粒子/グラファイト様炭素クラスター接合系モデルの電子状態の理論計算を行った。その結果、有機マトリックスの種類を問わず、炭化過程で生成する酸化ジルコニウムの組成はZrO_<1.95>であり、本法によって容易に酸素欠損が導入されることが判明した。さらに、solid-NMRの解析結果より、酸化ジルコニウム結晶格子中のカチオンサイトならびにアニオンサイトに炭素がドープされるとともに、クラスター状のグラフェン炭素も取り込まれていることが明らかとなった。この、酸素欠損,炭素ドープ,グラフェン炭素取り込みの相乗的な効果によって、5.0eVとバンドギャップの大きな酸化ジルコニウムが可視光応答化することが強く示唆される。また、NMRの解析結果より、炭素クラスターもドメインサイズ50nm以下のグラフェン骨格であることが示され、クラスターモデルの計算結果より、一部が離散化したバンド構造を形成するため、酸化ジルコニウムからの励起電子、もしくは、正孔を効果的に捕捉するものと考えられる。しかしながら、酸化ジルコニウム骨格に対する炭素のドープ量は、前駆体の調製に用いたジルコニウム化合物と有機マトリックスの分解温度に依存することも判明し、分解温度の低い酢酸水酸化ジルコニウムと分解温度の高いフェノール樹脂を前駆体とした複合体は、比表面積が250m^2/gと極めて大きくなるものの、光触媒活性がほとんど発現しなかった。従って、可視光応答性と高比表面積を両立させるためには、比較的熱硬化性の高い有機マトリックスを用いるとともに、有機マトリックスの熱分解温度とほぼ同じ分解温度を有するジルコニウム化合物を用いなければならないことも判明した。
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