研究概要 |
本研究は平成21年度~平成23年度の最終年にあたり、これまでに得られた結果に基づき、ZrO_2小炭素クラスター(C_x複合体の酸化活性の向上を目的として、助触媒の担持について検討を行った。酸化活性を有する金属酸化物として知られているMnO_2,CeO_2,WO_3の担持を試みたところ、MnO_2もしくはCeO_2を担持した複合体に比較的高い酸化活性が認められ、可視光照射下における水素の生成量はPt担持のみのものと比較して4倍程度増大することが判明した。また、比表面積の増大ならびに複合体表面の親水化を目的に、乳化重合法によって前駆体を調整し、焼成の徐冷段階で酸素を導入する手法を試みたところ、5000Cの徐冷段階において20%の酸素を添加した系において、比表面積が400m^2/g程度の複合体が得られ、光触媒活性が5倍以上向上することも明らかとなった。 次いで、各種の炭素ドープ型酸化物の状態密度を計算したところ、酸化物のバンドギャップにかかわらず、炭素がカチオンサイトに置換することでバンド構造のスプリット化が生じることが判明したため、ZrO_2よりもバンドギャップが大きく、高い酸化還元活性を示すことが期待されるHfO_2,SiO_2,Al_2O_3を導入した系について検討を行ったところ、これらが可視光応答型光触媒として機能することが判明し、特に、SiO_2系は絶縁体にもかかわらずZrO_2系とほど同程度の光触媒活性を示した。 さらに、隔膜セルを用いた水素製造システムの雛型を構築するため、Pt担持ZrO_2/C_x(還元優勢型)とMnO_2担持ZrO_2/C_x(酸化優勢型)の複合体をAlもしくはCu板の片面にそれぞれ電着させた膜を用いて検討を行った結果、還元側においてH2の生成が認められたものの、酸化側ではほとんどO_2が生成しないことが判明した。この結果は、AlもしくはCu板と複合体の間で電荷分離が生じていないことを強く示唆するため、電荷分離を誘発する薄膜の構築を試みた。アノード酸化を基盤とした電流反転法もしくはカソード電析法を用いることで、膜表面~電極界面においてAl_2O_3とMgOの組成が連続的に変化する薄膜の構築に成功し、これらが電荷分離能を有することも明らかとなった。
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