研究課題/領域番号 |
21310083
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
長尾 昌善 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 主任研究員 (80357607)
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研究分担者 |
吉田 知也 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 研究員 (80462844)
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 電界放出 / 静電レンズ / 電子顕微鏡 / 電子ビームリソグラフィー |
研究概要 |
本年度はマイクロレンズ一体型フィールドエミッタを、(1)プロセスエラーなく作製することができるデバイス作製プロセスの構築と、(2)構築したプロセスによりマイクロレンズ一体型フィールドエミッタを実際に試作すること、さらに(3)試作したデバイスのビーム系の評価することを目標に研究を推進した。その結果以下の成果を得た。 (1)プロセスエラーの大きな原因は次の2つであった。一つは、多段の電極を形成するときに起きる薄膜(特に絶縁膜)の剥離と、もう一つは、フッ化水素酸で絶縁膜のエッチングの際に、本来はエッチングされないはずの金属が腐食されてしまうというものである。絶縁膜の剥離に関しては、成膜方法であるプラズマCVDの条件をガス流量をより少なく、成膜温度をより高く制御することで、薄膜の内部応力を引っ張り応力から圧縮応力側へ制御することで解決した。金属膜の腐食に関しては、原因を調査した結果、薄膜の折れ曲がっている特定の部位にだけ起こることから、金属膜内部に発生する応力が原因で腐食が起こると推測される。したがって、金属膜全体にアルゴンイオンを照射することで応力を緩和し、腐食の問題をも解決した。これらにより、安定に、多段のしかも、絶縁膜の膜厚の自由度が格段に向上したマイクロレンズ一体型フィールドエミッタが形成できるようになった。 (2)これまでに開発した作製プロセスを集大成し、各電極の開口径を制御し、絶縁膜の厚さも、シミュレーションにより求めた電子ビームの集束に最適であると思われる比較的厚い膜のデバイスを歩留まりよく作製した。作製したマイクロレンズ一体型フィールドエミッタは電極の数は4段であるが、絶縁膜と電極膜を合わせたトータルの膜厚は10μm程度で、電子ビームを収束させるに十分な厚いレンズを形成できた(本研究開始前には厚さ2μm程度のレンズしか形成出来なかった)。 (3)試作したマイクロレンズ一体型フィールドエミッタの電子ビームの収束特性を測定した結果、デバイスから1mm離れたところにおいて、電子ビームの広がりのないほぼ平行ビームが形成できていることを確認した。この結果に、昨年度開発したウェネルト電極を付け加えれば、ナノメートルオーダーのビーム径も視野に入ってくるものと思われる。
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