本研究の目的は、研究代表者らが世界に先駆けて開発した新しいタイプの窒化物羊導体ナノ結晶であるGaNナノウォールの結晶成長機構の解明と制御技術の開発、ナノ物性の評価、およびナノ光デバイス(半導体レーザ:LD)とナノ電子デバイス(電界効果トランジスタ:FET)応用の実験的検証を行い、革新的ナノデバイス材料としての可能性を提示することである。研究計画を以下に示す。 (1) ヘテロ構造ナノウォールの結晶成長技術の確立 (2) GaNナノウォール結晶のMBE法による選択成長機構、貫通転位抑止効果の解明 (3) GaN系ナノ結晶の物性評価(格子歪の緩和効果、In組成分布のナノ構造効果) (4) InGaN/GaNナノウォールの可視域光励起発振の検証とInGaN/GaNナノウォールLDの開発 (5) GaN/AlGaNナノウォールの電気伝導特性評価とFET動作の検証 初年度は、主に上記(1)および(2)の課題を実施し、計画通りの成果を得た。具体的には、GaNアンプレート上に形成したTi及びTiO_2ナノパターンを選択成長マスクとするMBE法によりGaNナノ結晶を再現性良く成長する条件を把握し、例えば、幅約100nm、間隔30nm程度の超精密規則配列ナノウォールアレイの成長が可能となった。ナノ結晶のサイズによりInGaNの発光色を青から赤まで制御可能であることを見出し、その現象がナノ結晶側面におけるInとGa原子の拡散と脱離を考慮した拡散方程式によりモデル化できることを示した。近赤外領域への応用が期待されるInNについてもMoマスク選択盛.長を用いナノウォールが成長可能であることを示した。また、MOCVD法で成長した膜状InGaN量子井戸をドライエッチングで低損傷加工して作製したナノ構造の発光特性を系統的に評価することにより、ナノ結晶側面での歪緩和効果による発光効率改善効果のナノ結晶サイズ依存性を明らかにした。さらに、初期的ながらナノウォールの光励起発振現象の観測に初めて成功した。
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