(1)エネルギーの流れに基づいたプラズモン共鳴表面の設計法の確立 光の放射/吸収を根源的に制御する基本素子として重要な、特定の偏光・特定の波長の光だけを完全に吸収するプラズモン共鳴表面(ナノサイズのプラズモン共振器を一面に敷き詰めた表面)を、エネルギーの流れに基づいて見通し良く設計する手法の確立を目指し、RCWA法とBEM法という二つの数値計算手法で構造の吸収スペクトルや電磁場分布を計算できる体制を整えた。我々はこれまでに単一のナノ共振器が、その幾何学的サイズよりもはるかに広い範囲から光を吸い集めることを明らかにしてきたが、RCWA法による計算により、周期的に配列されたナノ共振器でも同様に、広い範囲からの光の吸い集めが起こっていることを確認した。しかし、系統的な計算による、完全吸収表面が実現する条件と、吸い集め幅、配列間隔の詳細な関係の検討はまだ不十分である。 (2)プラズモン共鳴表面の制御性良い製造手法の確立 プラズモン共鳴表面を工業的に成熟した技術に基づいて制御性良く製造する手法を確立することを目指し、1個のモールドから大量のナノ構造を複製できるナノインプリント装置を購入した。これにより、隣り合うナノ共振器を内部でコの字型に連結した連結共振器構造の出発材料となる矩形格子を、石英モールドから樹脂への転写により作製することが可能となった。連結共振器の設計法は確立していないが、試行錯誤的に、石英モールドの設計値をいくつか求めた。 (3)プラズモン増強赤外トンネル光源の開発 本研究では、上記により設計・製造したプラズモン共鳴表面を応用して、トンネル発光により波長3~10μmの中赤外光を放射する新原理赤外光源を開発することを目指している。しかし、初年度は設計・製造を超える段階までは進めなかった。
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