研究概要 |
産運用研究に関しては、2006年以来取り組んできた、「決定係数最大化ポートフォリオ」構築問題に、動的ファクター選択方法を適用すると、従来の静的ファクター選択方法より遥かに良いパフォーマンスが実現されることを示した。また決定係数の定義の中の「分散」を、「絶対偏差」に置き換えることによって、従来より大型のモデルが解けること、そして事後パフォーマンスが大幅に改善されることを示した。 資産運用理論に関してはこのほかに、1991年に提案した「平均・絶対偏差モデル」の理論的・実用的重要性に関するサーベイ論文が、「Stochastic Programming : The States of the Art」(Springer, 2010)に掲載された。 信用リスクの研究に関しては、大型の半正定値計画法に利用した倒産確率推計法を開発し、その有効性を実証した。また超楕円曲面によって企業を分類する手法を開発し、この方法を用いると、企業の財務データのみを用いて、極めて短時間で有力な格付け機関が行った格付けと類似の格付けを行うことができることを示した。 本年度のもう1つの大きな収穫は、決定係数最大化ポートフォリオ構築や、企業の格付けに必要となる「ファクター選択問題」に関して、"一定数のファクターの中で、データとの当てはまりが最も良いものを求める問題"を、ほぼ完璧な形で解決したことがあげられる。古くから統計学上の難問と考えられてきたこの問題を、残差絶対偏差差和最小化問題として定式化した上で、0-1整数計画法を用いて解くことによって、最良のファクター集合を短時間で選択出来ることが示された。またその後に開発した、「多段階選択法」を用いることによって、より大規模な問題が解けることを実証した。
|