研究課題/領域番号 |
21310099
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
三好 博昭 同志社大学, 総合政策科学研究科, 教授 (80399055)
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研究分担者 |
金田 重郎 同志社大学, 理工学部, 教授 (90298703)
芳賀 博英 同志社大学, 理工学部, 教授 (30268114)
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キーワード | 高度道路交通システム(ITS) / 交通事故 / 温室効果ガス / 燃費規制 / 政策研究 / 経済理論 |
研究概要 |
今年度の最も大きな成果は、自動車の安全・燃費技術の普及政策に関するこれまでの研究成果を集大成し、2011年10月にPalgrave Macmillan 社からHiroaki Miyoshi and Masanobu Kii (eds.) Technological Innovation and Public Policy: The Automotive Industry, p. 205 として上梓したことである。この書籍は、三好博昭・谷下雅義編著『自動車の技術革新と経済厚生』白桃書房(2008)をベースに、本研究課題の研究成果を用いて大幅に加筆修正したものである。 本書は、1.日本の自動車技術政策の歴史的回顧と今後の展望(2章)、2.日本の燃費規制政策やITS技術政策のあり方に関する理論的・定量的研究(3章~7章)、3.中国の自動車交通問題と自動車技術政策(8章)という3つの部分から構成されている。中心となる第2部では、燃費規制方式の違いが車両価格や消費者便益に与える影響(3章)、日本の燃費規制方式の今後の方向性(4章)、ITSの市場普及水準・最適普及水準と政策のあり方(5章~7章)等を論じている。特に安全分野のITSの経済学的特色と普及のための政策を論じた7章と、中国の自動車技術政策を包括的に論じた8章は、国際的にも研究蓄積が乏しい分野での研究成果である。 本書の分析は、世界の自動車産業関係者に対して、有益な情報を提供していくものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、自動車の安全性と燃費に関わる最新技術を対象として、これら技術を消費者の経済厚生水準の向上や交通事故・地球温暖化問題の解決に結びつけていくための政策研究を行うものであり、研究は次の2つのテーマで構成されている。 1.安全ITSの普及政策の研究:現在、実用化の途上にある、路側情報利用型運転支援システム、情報交換型運転支援システム、歩車協調安全システムの3つのシステムを分析対象とし、市場普及のための政策研究を行う。 2.燃費に関する規制政策の研究:燃費規制によるメーカや消費者の行動変化を内包した規制インパクト分析モデルを構築し、各種燃費規制方式の比較検討を行う。 当初の研究目的と比較すると、「安全ITSの普及政策の研究」については、経済厚生の観点からの普及政策分析、都市構造の違いが政策のあり方に与える影響分析等、概ね当初目標とした内容について研究を達成できた。一方、「燃費に関する規制政策の研究」については、2015年度燃費基準と消費者便益との関係について成果を発表できた。また、中国における省エネ・燃費関連政策の取り纏めなど、当初予定していなかった研究分野でも成果を上げることができた。しかし、2020年度を目標年とする新燃費基準を評価しえる分析モデルは完成できなかった。これは、平成23年に決定された新しい燃費規制が、本研究課題で予め想定していた方式と異なる考え方に基づく規制方式を採り、分析モデルの考え方に再検討が必要となったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は補助事業期間の最終年度にあたるため、過去3ヶ年の研究の集大成として、次のような活動を行う。 1.学会等での発表:平成24年6月に、同志社大学技術・企業・国際競争力研究センターが開催する国際シンポジウム「サステイナブルな都市交通の構築に向けて-自動車の新技術をどう活用していくか-」、並びに平成24年11月にオタワで開催される第59回Annual North American Meetings of the Regional Science Association International(8月に応募)にて研究成果を報告する予定である。 2.セミナー・講演会の開催:内外から著名な研究者を招聘し、各種セミナー・講演会を開催するとともに、本研究の成果を国際的な共同研究に発展させていくべく意見交換・準備を行う。 3.論文執筆:これまでの研究成果をさらに発展させ、国際ジャーナルに論文を投稿する。
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