研究課題
平成23年度の目標は、創発型チーム認知シミュレーションの高度化と妥当性検証、および創発型チーム認知シミュレーションの実践的適用の方法論構築である。東京大学において航空路管制官チーム認知シミュレータの開発を進めると共に、東北大学、電子航法研究所は昨年度までに開発を行ってきた管制官認知シミュレータCOMPAS(COgnitive system Model for simulating Projection-based behaviors of Air traffic controller in dynamic Situations)の実用上のニーズについて実務者に対する聞き取り調査を行った。その結果、以下の2つのニーズが抽出された。1.高度な認知的タスクであり、従来は不可視であった管制業務の処理プロセスを、業務負荷やタスク処理効率の観点から可視化すること。それにより、管制官養成課程における技能伝承支援ツールとしての応用が期待される。2.時間制御など航空交通システムにおける新たな運用方式について、管制官の業務負荷の観点からその有効性を評価すること。これらのニーズに対応するために、COMPASに実装されている管制官の状況認識プロセスモデルをベースに、それを改良・高度化したCOMPAS^i(COMPAS in interactive mode)を構築した。COMPAS^iを用いて、現実的な航空交通流とそれに対する2パターンの処理プロセス(基準となる処理プロセスAと、管制官がより合理的であると判断する処理プロセスB)のシミュレーションを行い、業務負荷やタスク処理効率上の差異を適切に可視化することに成功した。これは、COMPAS^iの管制官訓練支援ツールとしての有効性を強く示唆する結果である。また、COMPAS^iを用いて、時間制御の実施を模擬した交通流シナリオのシミュレーションを行ったところ、業務負荷の低減効果が確認され、運用方式の評価用途への適用可能性が示された。これらの結果は、認知モデルを実装したシミュレーション・ツールを用いることにより、管制官の実践知や認知的負荷の一端を可視化し客観的に分析可能にしたものと言え、認知シミュレーションの実践的適用の1つの方法論につながるものと考える。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
Int. J. Cognition, Technology, and Work
DOI:10.1007/s10111-012-0222-y
Int.J.Cognition, Technology, and Work
巻: 14, 1 ページ: 83-92
10.1007/s10111-011-0179-2
Air Traffic Control, InTech (ISBN 979-953-307-795-5)
巻: (採録決定)(未定)
Proc.of 30th JSST Annual Conference
ページ: 523-527
Proc.of 4th Symposium on Resilience Engineering
ページ: 135-141