日本と米国の大学における教育・研究に関わる事故・インシデント事例とその背景要因の相違の有無を比較検討するために、研究協力者である大阪大学の安全衛生管理部の山本仁教授および米国のYale大学の環境安全衛生室のPeter Reinhardt氏およびIowa州立大学の環境安全衛生室のWilliam Diesslin氏と協働し、平成21年度の協議を経て共通のコンセンサスのもとで各大学における事故・インシデント事例のデータベースを作成した。このデータベースは、学生の事故・インシデントと教職員の事故・インシデントを分け、事故・インシデントの発生に寄与した背景要因の分析のためにM-SHELL分析の考えに基づき、Management(大学・部局等の問題)、Software(規則、研究マニュアル、教育・トレーニングにおける問題等)、Hardware(設備、機器の問題等)、Environment(作業場所の環境上の問題等)、Live Ware(上司の監督・指導、同僚のサポートの問題等)および事故・インシデント当事者のHuman Factor(不注意・技量経験不足等)の観点からRasmmusenの人間行動分類とReasonのHuman Error分類を参考に作成した事故発生寄与要因((1)教育・知識不足、(2)コミュニケーション上の問題、(3)不注意・軽率、(4)記憶違い、(5)誤認・錯誤、(6)過信、(7)怠慢・手抜き、(9)経験・技量不足、(10)危険認知不足、(11)体調不良・疲労、(12)焦り、(13)無謀行為・違反、(14)製品安全上の問題、(15)作業環境上の問題、(16)規則・手順(マニュアル・プロトコール)の問題、(17)研究室・教室・部署の管理上の問題、(18)部局(学部・研究所等のレベルでの管理上の問題、(19)大学の管理上の問題、(20)偶発的事象)の20種類のカテゴリーがいかに各事故・インシデント事例に関与しているかが判る形式に記載内容をまとめた。平成23年度はこのデータベースに基づき、日本と米国の大学における教育・研究に関わる事故・インシデント事例とその背景要因の相違の有無を統計的に検証する予定である。
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