研究概要 |
1960年及び2010年に南米チリで発生した巨大地震について,太平洋各地の津波波形ならびにチリの海岸などにおける上下変動データを用いて断層上のすべり量分布を推定した.1960年チリ地震については,地殻変動データのみから推定したものとほぼ同じ地震モーメントが得られ,地震波解析によるものよりも若干小さかった.2010年チリ地震については津波波形のみからだと陸地の下に大きなすべりが推定されたが,海岸の上下変動データも併用すると,大きなすべりは沖合に推定された. また,チリ海岸南部における現地調査を実施し,1960年より前の地震についての古地震学的データの調査を行った.1837年,1737年の地震については,現地の歴史記録には残されているが,津波堆積物は残っておらず,津波堆積物が残るほど大きかったのは,1960年地震の前は1575年であったことを確認した. 2010年10月にインドネシア・メンタワイ諸島で発生した地震について,現地調査による震度(地震の揺れ)と津波の高さ,さらには津波記録を使った解析結果から,この地震は津波地震であることが明らかとなった.これまでジャワ島の南では津波地震が発生していたが,スマトラ島の南でも初めてその発生が確認された. 2011年3月の東北地方太平沖地震について,東大地震研究所の海底ケーブル式水圧計や国土交通省のGPS波浪計に記録された津波波形は地震直後に数分以上かけて2m以上水面が上昇する第1段階の津波と,それに続いて3分間に2m以上上昇する第2段階の津波波形を記録していた.これらに加えて数多くの津波波形記録を用いたインバージョン解析から,海溝付近に40m以上の大きなすべりが発生し,これは第2段階の津波を説明すること,さらにプレート境界の深い部分でも10m以上の大きなすべりが発生し,これが第1段階の津波に寄与していたことが分かった.
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