研究概要 |
本研究の目的は,「ひずみ集中帯」での地震断層の形態や活動性を高精度に把握するために,衛星画像解析とモデル実験を組み合わせた独自の手法を採用し,定量的な地殻モデルを構築することである。平成23年度は研究最終年度として主として下記の二点に関する研究を実施し,成果を得た。 1)「衛星画像解析手法の改良と精度評価」の一環として,インドネシアや新潟中越地域ほか東北日本各地で取得されたSARデータを用いてInSAR解析を実施した結果,これまでよりも精密な地表面変動パターンが計測され,局所的な隆起現象あるいは沈降現象が存在することが確認された。また,抽出された局所的隆起/沈降現象について,断層に関連するものとそれ以外の原因によるものを変動パターンから分離する方法を考案した。 2)「モデル実験結果の定量化」を行うために導入された表面起伏精密計測装置を用いて,モデル実験表面地形を計測するための方法を確立した。また,新潟中越地域などで一般的に観察される短縮構造についてモデル実験とその表面/内部変動を計測した結果,地質構造形成過程が地殻構造(強度構造)と密接な関係にあることを明らかにした。さらに新潟ひずみ集中帯と比較するために,活発な地質変動が観察される北海道新第三系堆積盆地域における活断層周辺の地質変動に関するモデリングを実施した結果,現在までの地下探査・地質調査で存在が確認されている断層・変形構造の構造的特徴が,隆起/削剥作用によって説明できることを明らかにした。このことは,ある地域でテクトニクスに関する検討を行なう場合には隆起/削剥などの表層作用を考慮すべきであることを示しており,モデリングでも表面起伏の精密計測が必須であることを示している。
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