研究課題
昨年度に引き続き、年次計画に従って、姶良カルデラを横断する測線に沿って海域・陸域における電磁場観測を実施した。経費の大半は、これらの観測のための消耗品や旅費として使用した。海域の観測においては、鹿児島湾奥部の3か所において、底引網漁が休漁となる6月に11日間の測定を行なった。しかしながら、データを解析したところ、この観測では当初予定より少ない不良なデータしか得られなかったことが判明したため、一部予算を繰り越して2回目の海底観測を平成24年6月に実施した。データが不良であった場所付近の3か所において、19日間の測定を行ったところ、地磁気擾乱を捉えることができたこともあり、良質のデータ取得に成功した。前年度に開発・導入したアンカーの回収システムも全観測点で良好に動作した。陸域の観測では、桜島北東部を横断する5ヶ所において、10月~11月にかけて約10日間の観測を行なった。5ヶ所中2ヶ所では、野生動物によってセンサーを掘り起こされたため、地磁気擾乱を捉えたにもかかわらず、良好なデータとはならなかった。データ解析については、姶良カルデラを横断する2測線について、海域データも含めて2次元解析を行なった。その結果、姶良カルデラ中央部を横断する測線では、前年度までに実施した陸域データのみから推定した構造に比べ、高電気伝導度異常の位置が姶良カルデラの中心付近の桜島北東海岸付近に推定された。恐らくマグマ溜まりに関連した構造であると思われる。一方で、姶良カルデラ北部の若尊火山を横断する測線では、陸域データのみを用いて推定した構造とほぼ同傾向の構造が推定され、顕著な高電気伝導度領域は現在のところ見つかっていない。なお、これらの成果は、日本地球惑星科学連合2011年大会、およびメルボルン(オーストラリア)で開催された国際測地学・地球物理学連合(IUGG)2011年総会において発表した。
3: やや遅れている
平成23年度までに、姶良カルデラを横断する3測線のデータ取得を完了し、各測線で2次元電気伝導度構造を推定する予定であったが、人工ノイズや野生動物による獣害、海流の影響等、様々な事情により、一部の観測点では良好なデータの取得に失敗している。姶良カルデラ中央部と北部を横断する2測線のデータは概ね揃っているが、データの質に問題がある場所では、隣接する観測点との距離が大きくなるため、精度のよい構造推定ができていない。また、追加で補充観測を行なったデータの解析を進めているが、まだ構造推定に組み込むまでには至っていない。
当初の研究計画では、姶良カルデラを横断する3測線に沿って観測を行なうこととなっていたが、桜島から鹿児島市街地を通る一番南の測線は、今年度までの観測によって都市ノイズが予想以上に酷いことが判明したため、桜島島内でのみ観測を行なうこととする。また、今年度の陸域観測で一部データ不良があったため、その補充観測を24年度に予定する。23年度経費を繰り越して24年6月に実施した海域観測によって、2測線のデータが出揃ったので、このデータを含めた電気伝導度構造モデルの構築を急ぐ。
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http://www.ksvo.titech.ac.jp/~kanda/index.files/Page1349.htm