本研究では、マイクロRNA(miRNA)の発現・成熟を制御する機構を明らかにすることを目的としている。miRNAは、タンパク質をコードしないnoncoding RNAの一種で、メッセンジャーRNA (mRNA)の3’タンパク質非翻訳領域(3’UTR)に部分的に対合して、標的mRNAの翻訳を抑制する。これまでは、miRNAがどのような標的mRNAに対合して、その翻訳を抑制するのかという研究に焦点が当てられていたため、miRNAの発現・成熟過程についてはよくわかっていない。しかし、miRNAの発現および成熟過程の解析は、未知の多様な高次生命現象の解明には重要である。本研究では、この点に焦点を絞り、miRNAの発現・成熟に関わる機構について明らかにすることを目的とした。 RNAエディティングは様々な種類のRNAで起こることが報告されているが、近年、miRNAでもエディティングが起こることが明らかになり、その機能的意味が注目されている。エディティングは2本鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼ(ADAR)によってRNAの2本鎖部分のアデノシンが脱アミノ化されてイノシンに変換されることによって起こる。ヒトではADAR1~3の3種のADARファミリー遺伝子が存在するが、ADARの各アイソフォームによって、ターゲットとするRNAの種類やエディティング部位が異なるかどうかは明らかではない。そこで、平成24年度は、ADARの各アイソフォームと相互作用するRNAを次世代シーケンスによって網羅的に同定し、エディティングを受けたpre-miRNAを同定することによってアイソフォームによる機能の違いを検討した。また、miRNAの標的識別領域とされるシード領域にエディティングが起こると、標的mRNAの抑制効果に影響を与えることが明らかになった。
|