超好熱始原菌は少ない遺伝子数にもかかわらず外的環境の変化に自律的に適応できる生物であり、その極限的な環境の変化に応答する機構は興味深い。本研究では超好熱始原菌Thermococcus kodakarensisの環境適応における遺伝子発現制御機構の解析を行った。DNA結合因子依存型の発現制御としてNikRによるNi^<2+>輸送レギュロン、Phrによる熱ショック応答レギュロンを同定した。またDNA結合因子非依存型の発現制御として本菌のキチン代謝遺伝子群の発現を抑制するPINドメインタンパク質とその上流にコードされる機能未知タンパク質に着目し、これらによる制御が他の多数の遺伝子におよぶこと、および両タンパク質が相互作用して複合体を形成することを見出した。また推定プロテインキナーゼの遺伝子破壊により発現量が変動するタンパク質スポットが多数同定され、タンパク質リン酸化ネットワークによる発現制御系が超好熱始原菌にも存在することが示唆された。
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