本研究では、生体分子のゲノムスケールでの相互作用情報と分子構造の情報を統合し、分子レベルからネットワークレベルまでをシームレスに結びつけるプラットフォームを開発することを目的としている。これまでに、生体分子の構造空間(ストラクチュローム)の全体像を俯瞰するために、Protein Data Bank (PDB)に含まれている構造単位としてのchainをクラスター化しそれらの相互作用からネットワークとして体系化したツール、PDBnet、を開発してきた。 本年度は、まずPDBnetに必要なデータを継続して更新した。蛋白質の構造・機能単位であるドメインだけでなく、ドメイン以外で相互作用や機能にかかわる非ドメインの情報も網羅的に収集した。構造情報を元にドメイン及び非ドメイン間の相互作用を解析し、ドメインレベルでのネットワーク構築を行った。これらの情報はPDBnetに統合し公開した。次に、生化学実験で得られた相互作用データを継続して収集し、構造情報に基づく相互作用ネットワークと統合した。生化学実験で得られたデータは信頼性の評価を行い、その情報を付加した。これらのデータはPDBnetに統合し公開した。一方、PDBnetの検索・可視化インターフェイスの改良をすすめた。このため、分子の構造、相互作用、ネットワークなどの情報に加え、分子の機能や疾病と関連する分子の情報を統合した。そして、これらの関係を視覚的に理解できるようにPDBnet検索や可視化のインターフェイスの機能強化を行った。PDBnetを用いた解析としては、構造、相互作用、物性とネットワーク間の関係についての系統的な解析や、非ドメインの機能的役割に関する解析などを行った。これらの結果、PDBnetが生体分子の構造、相互作用、物性、ネットワーク、機能の関係を解析する上で有効であることを示すことができた。
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