研究課題/領域番号 |
21310133
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
坂口 和靖 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (00315053)
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研究分担者 |
今川 敏明 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (20142177)
中馬 吉郎 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (40372263)
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キーワード | 蛋白質 / 癌 / シグナル伝達 / 系統進化 / 生体分子 |
研究概要 |
p53の四量体形成はその機能発現に必須である。ヒト悪性腫瘍において、p53四量体形成ドメイン31アミノ酸残基中、24残基に49個のミスセンス変異が報告されている。これらの変異によるp53機能の不活性化機構の解明は、p53遺伝子のミスセンス変異による細胞癌化を理解する上できわめて重要である。本研究では、『癌抑制タンパク質p53四量体安定性と機能不全との間の閾値問題を解明する』ことを目的としている。 生物種間で特徴的な配列を持つ魚類、両生類、鳥類、哺乳類のp53の四量体形成ドメインペプチドを合成し安定性を解析したところ、四量体構造は脊椎動物において進化に伴い(魚類-両生類-鳥類、哺乳類)安定性が向上していることが判明した。進化の過程において四量体形成ドメイン中のα-helixのC末端部位が伸長することによって四量体構造の安定性を獲得したことが示唆された。また、機能発現に必須な四量体形成に必要な濃度は各生物の体温で一定の値に収束し、四量体構造の安定性が生態環境の変化に依存して安定化しており、四量体形成ドメインの安定性が生体環境に応答していることが示唆された。 さらに、p53タンパク質量、四量体形成能、および転写活性能を生細胞内で定量可能なシステムの構築に成功した。この系を用いてp53四量体形成ドメイン変異体のp53内在性レベルにおける各変異体の四量体形成量と、四量体形成ドメインペプチドを用いた四量体構造安定性とを比較した。その結果、各変異体の四量体形成量はその四量体構造の安定性に依存した。このことから、生体内p53の四量体形成は他のドメインによらず四量体形成ドメインに一義的に依存して四量体を形成することが示され、p53の癌抑制機能の維持には四量体構造の安定化が必須であることが示唆された。
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