研究概要 |
自然免疫は炎症、感染、アポトーシスなどの多岐にわたる疾患に関係することが知られており、自然免疫制御物質はそれらの疾患の治療薬につながると考えられる。本研究では、ショウジョウバエが有する機能を利用した、我々が自ら開発したアッセイを用いて天然資源に含まれる自然免疫制御物質を探索した。さらに、そこで得られた活性物質を鍵物質とする医薬品化学的研究を進めた。その結果,2種の微生物抽出物に自然免疫選択的な抑制作用を見出し,さらに1種の微生物抽出物に転写・翻訳抑制作用を見出したので,それぞれ分画を行った. 糸状菌Aspergillus sp. n-BuOH抽出物からは新規デプシペプチドを自然免疫応答抑制物質として単離・同定した.化合物はショウジョウバエには自然免疫選択的な抑制作用を示したが,ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に対してはほとんど影響を及ぼさなかった.また,化合物と同一の平面構造を有する既知の環状デプシペプチドaspergillicin Eを合成し,活性評価を行ったが,ほとんど抑制作用を示さなかった. 放線菌Streptomyces hygroscopicus n-BuOH抽出物からは新規trichostatin誘導体を自然免疫応答抑制物質として単離・同定した.さらに化合物はAtt-luc系のアッセイ条件下で分解し,trichostatin Aおよびtrichostatic acidを生じることを明らかにした. 放線菌Streptomyces sp. EtOH抽出物からは,自然免疫応答抑制作用ではなく転写阻害作用を有する新規オーレオリン酸類化合物を単離・同定した.化合物は構成糖の種類および糖の結合位置が既知のオーレオリン酸類化合物とは異なるため,生物活性についても感受性や選択性の違いが生じると考えられる.
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