研究課題
本研究課題では、バンコマイシン耐性菌の克服に道を拓くため、複数のアッセイ法と、化学プローブを組み合わせて、リード化合物の作用機序解析を行なう。化合物の菌体全体への効果を抗菌活性(MIC)として評価するだけでは分子レベルでの作用機序はわからないので、個別の菌体内反応に焦点を当てて詳しい評価をおこなうことが特徴である。前年度までの検討によって、バンコマイシンのアリールクロリド部分の化学修飾反応が確立された(J. Med. Chem. 2010)。本年度は、本修飾法と、既存のバンコマイシン変換法を組み合わせて、2カ所、もしくは、3カ所を同時に修飾した新しいタイプの化合物ライブラリーを合成した。合成したライブラリーを抗菌活性試験に付すことによって、構造活性相関理解を深化した。一方、前年度迄に合成した化合物群のなかから有望な誘導体を選び、作用機序解析を進めた。たとえば、光親和性標識を行なって結合タンパク質の解析を進めた。光反応を行なったのち、修飾されたタンパク質のウェスタンブロットによる同定、次いで、これを酵素分解して質量分析装置でアミノ酸配列を解析した。その結果、細胞壁重合を担うペニシリン結合タンパク質2が標的である可能性が示唆された。今後は、薬剤結合部位の同定を目指した研究を行う。さらに年度の後半では、脂質化された細菌の細胞壁中間体を用いた細胞壁合成に関する生化学的実験系の確立をめざして研究をおこなった。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Medicinal Chemistry Communications
巻: 2 ページ: 278-282
10.1039/C0MD00230E