研究概要 |
Aβ42抗体の研究:1) J. Biochem. 143 : 475-486, 2008で報告したヒト抗Aβ42線維scFv抗体のIgG1の分子を構築しその性状を調べ、B6とB7のIgG1抗体を作製した。2)B6抗体、B7抗体は、すでにAβ42の線維化反応を強く阻止することが明らかになっており、エピトープも明らかになっているが、B6やB7の抗体ファージを用い、Aβ42線維と結合している状況を電子顕微鏡で直接画像化した。ファージは長さを調整でき、この長さとディスプレイしている抗体を対応させておけば、ファージ抗体は、電子顕微鏡で、金コロイドに比べ、遥かに多様の分子に目印をつけることが可能な新規手法である。 Aβ42線維のペプチドミミックの研究: B6抗体のエピトープペプチド、B6-C15はAβ42の線維の成長の先端のコンフォメーションをミミックすること、線維化の途中に出現するAβ42 oligomerに結合し、Aβ42線維化を阻害する。Aβ42線維化再構成実験からAβ42線維化の分子集合の分子機構を解析し、1)プレフィブリルオリゴマーの形成過程と線維形成過程とが異なる経路として機能している。2)線維形成過程にはプレフィブリルオリゴマーが関与する経路と関与しない経路がある。3)B6-C15ペプチドは、プレフィブリルオリゴマーに結合し、プレフィブリルオリゴマーが関与する経路を阻害し線維形成を阻害する事を明らかにした。 ワクチン分子設計の研究:Balb/cおよびC57BL/6Jマウスを用いた抗体産生誘導実験:1)B6抗体のエピトープペプチド,B6-C15のN末にビオチン化したTAT配列を融合させ、これをストレプタピジンと複合体を作製し、Balb/cマウスにAlumを用いて免疫すると、Balb/cではAβ42線維に反応するIgM抗体産生が誘導されるが、B6マウスではほとんど誘導されない事が判明した。しかし、B6-C15モチーフを提示するファージ自身を水溶液で皮下に注射するだけで、B6マウスにおいてAβ42オリゴマー反応性IgG2bが誘導された。これに基づいてアルツハイマーモデルマウス、J20(アミロイド前駆体タンパク質(APP)遺伝子のトランスジェニックマウス)を用いて、能動免疫、受動免疫の影響を見る実験を開始した。
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