スクアリン酸含有アミノ酸を固相上で連結する方法論の開発に取り組み、昨年までに、ペプチドアナログ(96種)の新規ライブラリーを構築した。本年度は、合成効率を高めるための鍵となる脱炭酸反応の収率向上を再検討した。その結果、ランタノイド系のルイス酸に有効な触媒効果があることを見出した。これをもとに、これまで、スクアリン酸含有アミノ酸を一つ組み込むことから、スクアリン酸含有アミノ酸を複数組み込んだ新規ペプチドアナログの合成に取り組み、スクアリン酸含有アミノ酸のみから形成される、新規ジペプチドあるいはトリペプチドアナログを初めて合成できた。それらの立体構造について、NMR解析を試みた結果、スクアラミド部位に関する、回転異性体が存在していること、ならびに、スクアリン酸(C末)部位が水素結合していることが示された。 機能を探る研究として、アポトーシス関連酵素であるカスパーゼ3の阻害を標的とするスクアリン酸含有ペプチドアナログの合成に取り組んだ。これまでの合成化学的知見をもとに、カスパーゼ認識配列(Ac-DEVD)の末端部位をスクアリン酸含有アミノ酸に置換したアナログおよびアミドライクなアナログを合成した。酵素阻害活性を蛍光アッセイによって調べたところ、数マイクロモルの濃度領域で阻害活性を示すアナログを見出した。これにより、スクアリン酸含有アミノ酸を用いた、酵素阻害活性分子の創製の可能性を新たに提案できた。これとあわせて、新規ペプチドライブラリーのがん細胞増殖抑制活性ならびに、βーセクレターゼ阻害活性についても現在検討を進めている。このように、4年間にわたる支援を得て、スクアリン酸含有アミノ酸の自在なペプチド導入法の確立と、生物活性分子創製への新たな可能性を切り開くことができた。
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